昭和村に隣接する下郷町出身の玉川さん。仕事と家を紹介され、大好きな自然の中で生活できるという好条件につられ、かるーい気持ちで移住したのだとか。今や狩猟にハマり、結婚して所帯も持ち、すっかり昭和村の村民に。移住した経緯や猟のことなどをお聞きしました。

狩猟大好き! 玉川大輔さん
1987年生まれ。福島県下郷町出身。2015年に会津若松市から移住。昭和村振興公社が運営する道の駅「からむし織の里しょうわ」内の飲食店に勤務。昭和村猟友会に所属し、一年中猟や駆除に出ている。

「仕事も住むところもあるから移住しておいで」と同級生に誘われ、行ってみることに

――お隣の下郷町のご出身だそうですね。どういう経緯で移住されたんですか?

玉川さん
下郷町で働いた後、東京の調理師学校に通い、福島県に戻ってきて会津若松市の飲食店で働いていました。そのとき昭和村役場に勤めていた同級生が「振興公社で働かないか」って声をかけてくれたんです。

1度は断ったんですが「自然がいいよ〜」「川釣りができるよ〜」ってプッシュされて。自然が好きだったので「一回、住んでみるか」と思って2015年にやってきました。

――思っていたより軽い感じで移住されたんですね(笑)。仕事や住む場所はどうしたんですか?

玉川さん
最初は振興公社が運営している宿泊施設での調理の仕事を紹介してもらい、その後、今働いている道の駅の飲食店に移りました。家は単身用の村営住宅が運よく空いていて、そこに入居しました。

――村営住宅って、家賃はいくらくらいなんですか?

玉川さん
会社が半額補助してくれたので、駐車場込みでだいたい月1万円ちょっとですね。しかも2014年に建てられたばかりで、まだ新しかったんです。

今は結婚したので、家族で床面積約85平米の3LDK一戸建ての村営住宅に住んでいます。ここは、補助なしで月3万円くらいかな。
福島県昭和村の村営住宅に住む玉川さんのご自宅

――やすっっっ!!!一戸建てが月3万円ですよね?東京だったら狭いワンルームも住めないですよ。

玉川さん
そうなんですか?本当は家を建てたいんですけどね〜、給料が上がれば(笑)。

――(笑)。奥様とは昭和村に来てから出会ったんですか?

玉川さん
はい。妻は村の「からむし織体験生事業」に参加してそのまま移住し、道の駅の売店で働いていました。真面目な性格で、出会った当初は「自分とは合わないんじゃないか?」と思ったんですが、その真面目なところが逆にいいなって思うようになって(笑)。2017年に結婚しました。娘も生まれて、今は家族3人で暮らしています。

休日も仕事終わりも、山へ狩猟に。季節ごとに異なる自然体験ができる

――休日は何をされているんですか?

玉川さん
猟師をしているので、休みの日はほぼ必ず猟に行きますね。日没までは猟をしていいので、日が長い季節には仕事が終わった後にもやりますね。山に罠を仕掛けたり、住民から動物の目撃情報があれば行ったり。

冬は車を運転していても動物の足跡を探してしまいます。

――かなりハマっているみたいですが、以前から猟はされていたんですか?

玉川さん
いえ、昭和村に来てから始めました。もともと興味があって、移住して1年経ったころに、私が勤務していた宿泊施設で猟友会の宴会が行われていたので、当時の会長に「狩猟がしたいです!」と相談しました。そこから免許を取って、猟友会に入りました。現在、私が最年少ですね。
ライフルを構える玉川さん
猟銃を構える玉川さん。この日(3月12日)は、昭和村の喰丸エリアと小中津川中の沢エリアを散策

――昭和村の狩猟時期と、狩猟できる動物が知りたいです。

玉川さん
狩猟は11月15日〜2月15日、動物によっては3月15日までです。それ以外の期間は、有害鳥獣駆除として捕獲しています。狩猟鳥獣は、イノシシ、ニホンジカ、ツキノワグマ、ヤマドリ、ウサギあたりが対象ですね。

ヤマドリは雄は狩猟OKだけど雌はダメとかいろいろ決まりがあるので、動物をよく見極める必要があってなかなか難しいですよ。

――細かい決まりがあるんですね。狩った動物はどうするんですか?

狩ったイノシシを運ぶ玉川さんと猟友会の先輩
指定された動物を駆除した際には、スプレーで日付を入れた個体写真やしっぽの提出が必要
玉川さん
駆除の場合、証拠写真を撮ってから埋めます。猟期なら食べることもありますね。

クマはおいしいですよ〜。特に秋から冬はドングリなどの木の実を食べているので肉に臭みがなくて脂がのっていて、すき焼きやクマ汁にすると絶品です。

――クマ汁!食べてみたいです。猟以外だと、どんな活動や遊びができますか?

玉川さん
季節ごとにいろんな体験ができますよ。たとえば春は山菜採り、夏は渓流釣りでイワナ、ヤマメ。川釣りだと、アユ、ハヤ(ウグイ)なんかが釣れます。秋は、キノコ狩りや落ち葉だらけの山を歩くのも楽しいです。

冬は雪で遊べるし、自然が好きな人なら昭和村はぴったり。僕みたいに山遊びをしたい人には最高の土地です。

生活費は月6万円。共同作業やイベントで村民ともすぐに打ち解けた

――福島県内のほかの地域から移住してみて感じる、昭和村の魅力を教えてください。

玉川さん
ここはみんな人柄がいいんですよね〜。人との距離感も近いので、すぐ仲良くなれると思います。野菜なども新鮮なものを食べきれないほどもらいます。僕もお返しでイノシシやシカの肉を渡しています。

――昔ながらの人のつながりとか助け合いが残っているんですね。食費もほとんどかからないんじゃないですか?

玉川さん
3人家族ですが、そんなに外食しなければ月3万円くらいで済みますよ。

――家賃3万、食費3万、計6万円。しかも新鮮な食材が食べられるなんて、めちゃくちゃ豊かですね!でも移住って地域に馴染めない人もいるって聞きます。

玉川さん
僕の場合、職場のおばちゃんたちがイベントなどをいろいろ教えてくれたので、都度参加するようにしていましたね。でも一番大きかったのは猟友会に入ったことだと思います。そこから村民との関係が広がりました。

あと村には「普請」という共同作業の機会があるんです。草刈りや側溝の掃除など、みんなが使う場所を手入れして、終わったらしゃべってご飯を食べる。これも交流の機会になります。
インタビューに答える玉川さん
インタビューに答える玉川さん

――逆に昭和村への不満ってないですか?

玉川さん
うーん、村には個人商店しかなくて、夜7時くらいには閉まってしまうので、買い物は不便かもしれませんね。でも急ぎの場合は車で30分くらい走れば買えるところはありますし、週1回生協の宅配も頼めます。Amazonで注文しても都会と同じくらいの時間で届くので、特に困っていませんね。

それに数年後には「博士トンネル」が開通予定なので、完成すれば会津若松までの移動時間が短くなってもっと便利になると思いますよ。

――最後に昭和村での夢を聞かせてください。

玉川さん
ジビエを村外にも広めたいですね。今は放射能の関係で出荷規制がかかっているんですが、解除されたら村の飲食店で提供したり、村外でも販売したり、捕獲した獲物をすべて無駄なく。皮は革に、角や爪は加工し、肉は食用にしていきたいと思っています。

玉川さんのオススメ昭和村スポット

「雪の上をかんじき(スノーシュー)で歩く」

冬の昭和村の雪景色
昭和村では冬になると、写真のように、一面が銀世界となる
玉川さん
山の中は静かで鳥の声が響き、遠くの山の木が風で揺れる音まで聞こえます。特に雪が積もった冬場は無音のときもあるんですよ。本来の自分に戻れる気がします。

この記事は、令和3年度 福島県地域創生総合支援(サポート)事業を活用しています。

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